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2022.07.28
神原 あゆみ

ネット通販と法律

1 はじめに
2020年春頃に始まった新型コロナウィルス感染拡大により、在宅時間が長くなり、インターネット上で物を購入する機会が増え、インターネットを通じた売買取引が急速に普及しています。クリック数回で取引が成立してしまうネット通販は、消費者が予期せぬ被害を受けることもあることから、そうした被害を防ぎ、商品等の流通を円滑にするため、法律で規制されています。以下簡単にご紹介いたします。

2 特定商取引法について
ネット販売を含む通信販売は特定商取引法(以下、「法」といいます。)により規制されています。また、ネット通販だけでなく、インターネット・オークションも規制の対象となります。法は「販売業者」を対象としていますが、個人であっても例えばインターネット・オークションで取引額が月100万円以上であったり、同じものを複数出品したりする場合には法の適用対象となる可能性があります。

3 販売業者に対する法規制
法はネット販売に関して以下のような規制をしています。
・購入者等に提供すべき情報の表示義務(法11条)
法は、販売業者が購入者等に対して、販売条件、送料、契約の解除に関する事項等の情報を提供する義務があることを定めています。そのような情報は、オンラインショップの商品を紹介するページで見かける「特定商取引法に基づく表示」の部分に書かれています。
ちなみに法は、販売業者の情報提供手段のことを「広告」と呼んでおり、俗にいう商品の宣伝のための広告よりも広い意味を含んでいます。

・誇大広告等の禁止(法12条)
法は、販売業者が商品の販売条件等の広告をする際に、著しく事実と異なる表示や、実際よりも著しく優良であり、又は有利であると誤認させるような表示をすることを禁止しています。

・未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法12条の3、12条の4)
法は、事前の承諾がない限り、販売業者が消費者に対して電子メールによる情報提供を行うことを原則として禁止しています。電子メールは、容易かつ費用をかけずに送信できる特性から、販売業者が一方的な商業広告を送り付ける事例があり、そうした事態から消費者を保護するために、電子メールによる広告は原則として禁止されています。

・契約解除に関して不実の告知の禁止(法13条の2)
法は、販売業者が顧客に対して、ネット販売の契約の申込みの撤回又は解除を妨げるために、撤回・解除の関連事項について、事実と異なることを告げる行為を禁止しています。   

4 販売業者に対する罰則等
上記の法規制に違反した事業者は、業務改善の指示及びその公表や業務停止命令の行政処分の対象となるほか、業務停止命令を受けた業務を別法人で開始することも禁止する命令を受けることがあります。また、販売業者が業務改善指示に従わない場合の罰則(懲役6月以下または100万円以下の罰金)も定められています(法71条)。

5 ネット販売に関する民事上のルール
法は、ネット通販を通じた契約の成立に関して、①商品の引渡日から8日以内であれば契約の申込みの撤回又は解除(法15条の3)ができることや、②販売業者が事実と異なる表示をしたことにより消費者が誤認した場合に契約の申込みの取消し(法15条の4)ができると定め、消費者が誤認に基づいて契約を申し込んでしまった場合の救済措置を設けています。ただ、特約によって申込みの撤回等ができない場合がありますので、購入前に特約の有無を確認することが重要です。なお、訪問販売において認められているクーリングオフの制度(消費者からの無条件かつ一方的な解除を認める制度)は、通信販売には認められていません。

6 2021年の法改正について
昨今、詐欺的な定期購入商法にまつわるトラブルが増えたことを受けて2021年に法が改正されました。具体的には、①ネット販売(申込みの書式を事業者が定めている場合)の最終確認場面で、商品の数量や回数、期間等、定期購入の場合には各回に引き渡す分量や、自動更新である場合にはその旨等を、販売業者が表示することが義務付けられました。また、②例えば「お試し無料」と表示しながら定期購入が条件となっている場合など、定期購⼊でないと誤認させる表⽰に対する罰則規定(100万円以下の罰金)や、 ③上記②の表⽰によって申込みをした場合にその申込みの取消しを認める制度の創設等の改正がなされています。

7 その他の法律
ネット販売では、商品の種類ごとに適用される法律があり、販売許可が必要な場合(例えば食品販売においては食品衛生法上の営業許可、中古品の販売については古物営業法上の営業許可等)、商品の品質や価格に関する表示に関する規制(景品表示法・健康増進法等)に従う必要がある場合があります。
また、物品販売の際に適用される法律(例えば取引の公正を図るためルールである独占禁止法等)や、消費者との取引に関する法律(消費者契約法)も、ネット販売に適用されます。 

8 雑感
ネット販売の便利さを知ってしまうと後戻りはできず、食べることが好きな私も、コロナ禍で在庫過多となったハンバーグ等のご馳走をインターネットで購入して自宅で楽しんでいます。ネット販売されている商品は千差万別ですし、送料に関しても、商品の単価よりも送料の方が高い商品もあります。「注文を確定する」のボタンをクリックする前に、商品の数量や、定期購入の有無等、慎重に確認する方がよいと思います。もしインターネットで商品購入後に被害に気付いた場合でも、販売業者に対抗する措置を取ることもできるかもしれませんので、あきらめず、何かお困りごとがありましたらお気軽にお問い合わせください。

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