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2022.04.25
木村 尚徳

合弁会社等への貸付けと貸金業法

1.合弁会社の資金調達
合弁事業とは、一般的に、複数の事業者が共同して事業を行う事業形態のうち、複数の事業者が資本的な拠出(出資)を行う事業体(会社や組合など)を用いて事業を実施するものをいいます。合弁事業を実施するための事業体として、例えば株式会社を何社かで設立するにあたり、合弁契約が作成されることが多いと思います。
そのうち、合弁会社の資金調達方法として、合弁会社株主による追加出資や同株主や第三者からの借入れといった方法に関する規律が定められる場合があろうかと思います。契約によっては貸付けに関する規定は置かれていない場合もあるかもしれません。

2.貸金業法上の規制
ここで、合弁会社株主から合弁会社に対して貸付けを行う場合、これが貸金業法上の貸付けにあたり、貸金業登録が必要となる場合と不要になる場合があります。2014年4月の貸金業法施行令等改正前には、合弁事業における株主から合弁会社への貸付けについては、原則として貸金業の規制が適用されると理解されていたものの、合弁会社の資金ニーズを考慮した同改正がなされ、一定のグループ会社間等で行われる貸付け及び株主等による合弁会社等への貸付けについては、一定の要件のもと、貸金業規制の適用除外とされました。具体的には、合弁会社の議決権の20%以上を保有する合弁会社株主が、合弁契約に基づいて合弁会社の経営を共同で支配している場合において総株主の同意に基づいて行う貸付については、貸金業登録は不要とされています(貸金業法2条1項5号、同法施行令1条の2第6号ロ、同法施行規則1条1項・5項)。

ですので、貸金業登録の無い合弁会社の株主が、合弁会社へ貸付けを行おうとする場合には、議決権の20%以上を保有している必要があり、また合弁会社の他の全ての株主の同意を得ていることが必要になります。もし合弁契約書において、合弁会社株主から合弁会社への貸付けが、例えば議決権の4分の3以上の合弁会社株主の承諾により実行できるような定めがあれば、そのような貸付けの実行は貸金業登録が必要となる場合があるので、注意が必要です。また、合弁契約書に定めが無い場合には貸付けを行う際に全株主の同意があることを確認する書面を作成することが適切であるといえます。

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